【新・関西笑談】あこがれの果実の味は(3)(産経新聞)

 □ブルーベリーフィールズ紀伊國屋社長 岩田康子さん

 ■無農薬で手間かけ育てた 生活のためには負けられない。

 −−1キロ3千円で売れれば、年収300万円と見込んだブルーベリー。取引先はあったのですか

 岩田 300万円というのは、1粒残らずお金にできればの話でした。実際は1トンを1人で摘み取って売れるわけもなく、しかも市価は1キロ1500円。でも、生活もかかっているし、無農薬、無除草剤で手間ひまをかけて育てただけに値段を下げて売るわけにはいかない。価値に見合う値段で買ってくれる人を探そうと思いました。

 −−しかし、さばききれなかった

 岩田 言い値で売れなかった分は「では結構です」って持ち帰りました。今にして思えば強気でしたね。生のブルーベリーは保存が利かず、それで仕方なく、実と砂糖を炊いてジャムづくりを始めました。後で県の講習会に行って驚いたのが、ジャムづくりは水とペクチンを加えて量を増やし、味が薄くなるからクエン酸と香料を加えて…という方法でした。これなら安価に作れますよね。

 −−確かに。岩田さんのジャムは、大きな果実がふっくら炊けててさらっとしていて…。コンポート(果物のシロップ煮)みたいですね。

 岩田 1瓶250グラムで1050円と安くはないけれど、炊いているうちに崩れてベースになる実と粒がしっかり残る実と品種を選んで、加水せず果実をたっぷり使って作っていますから。今は高島屋さん、阪神百貨店さんやホテルにも卸してますけど、約10年前に初めてバイヤーの方が来たときには「山の上に背広の男性が来た!」って驚いて、お断りしたんです。

 −−断ったのですか

 岩田 大量には作れないですし、質も落としたくない。それでもバイヤーの方は何度も足を運んでくださって、1本でもいいんですとおっしゃるんです。それで、百貨店の棚に私のジャムがひとつ並ぶことを想像してみたら「もうけではなく、農家が誠実に作ったものも置いてみたい」という気持ちを感じました。1回30本しか納入できませんが、今も続けておかせていただいてます。

 −−果実とジャムで、生活できるように

 岩田 いえ、子供もどんどん大きくなっていくし、収穫は年1回。これでは食べてはいけない、という思いが押し寄せてきました。そのとき、農作業ができない雨の日にケーキを焼いたり、料理を振る舞ったりしていた友達が「知人が来たいと言うから、お金をもらってやってみたら」と提案してくれました。

 −−それで?

 岩田 初めはプロでもないし、こんな山奥に来ていただくなんて…と思いましたよ。でも、実際にはお金も必要で、やらなかったら後悔する。精いっぱいと一生懸命を重ねて失敗したら仕方ないと、1日1組、フレンチのフルコースを出すことにしました。

 −−生活の糧が増えたのですね

 岩田 友達の評判で予約が埋まるようになっていって…。ただ、1人で調理も接客もするため「熱いものを熱く、冷たいものを冷たく出して当然」と叱咤(しった)激励もいただきました。初めて予約が重なってお断りした日のことは今でも覚えています。「ここまでやったんだ」と、なんだか誇らしい気持ちでした。(聞き手 石川有紀)

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